プロジェクトストーリー

PROJECT.1

交通事故案件

事件概要

自転車乗車中に乗用車にはねられ、高次脳機能障害を患った交通事故の案件です。
高次脳機能障害とは、脳の損傷によって、注意力や記憶力、感情のコントロールなどの能力に問題が生じ、そのために日常生活や社会生活が困難になる障害のことをいいます。

依頼者は、当時、中学に通う男子生徒でした。依頼者は、生まれつき重たい障がいをもっていましたが、これを乗り越えるために、幼少期から家族とともに、それこそ血のにじむような努力をしていました。そして、小学校は健常者と同じ公立の小学校に行き、中学校からは県外の日本トップクラスの特別支援学校に進学していました。将来は、4年制大学に進学し、教師として健常者と同じ環境で働くための努力を重ねていました。依頼者は、事故が原因で記憶障害や遂行機能障害などの高次脳機能障害や、嗅覚や味覚の障害、四肢の感覚障害などの重たい障害が残り、人生が一変することになりました。いままでごくあたり前にできていたことができなくなり、日常生活に大きな支障が生じ、4年制の大学に進学して教師になるという夢も諦めざるを得なくなりました。

ご依頼いただいた時点で自賠責保険1級の後遺障害が認定されており、保険会社との賠償交渉を専門家に任せたいということで、交通事故案件を数多く取り扱っている弊所にご依頼いただきました。

解決方法

この案件の争点は大きく2つありました。1つ目は逸失利益について、2つ目は将来の介護費用についてです。

この案件では、逸失利益の算定方法が大きな争点になりました。後遺障害が残ったことにより失った将来の収入のことです。
この逸失利益をどのように計算するのかということが大きく争われました。というのも、依頼者は、生まれつき重たい障がいをもっていたので、逸失利益について健常者の平均賃金で計算するのか、障がい者の平均賃金で計算するのか、という点が争点となりました。保険会社側はできるだけ賠償金額を抑えたいので、障がい者の平均賃金により逸失利益を算定すべきであるとの主張をしてきました。しかし、この保険会社の主張は、障がいがあるからといって、障がい者の平均賃金で算定をすることが、憲 法で法の下の平等をうたう国の司法のあり方として許されるのかという重大な問題を孕んでいました。

依頼者やご家族は、幼少期から、周りの健常者の同年代の子供達の誰にも負けない努力をして、障がいをもちながら健常者と同じように生きてきたし、社会に出ても健常者と同じ就労環境で働くための努力をしていました。そんな依頼者やご家族にとって、「障がいがあるから、健常者と同じ収入を得ることはできない」と決めつける保険会社の主張は、依頼者のいままでの生き方やこれからの人生を否定するに等しい主張で、到底受け入れることができないものでした。

この争点に関しての主張立証のポイントは3点でした。

1つ目は、理論面からの主張です。
日本は、平成26年に障害者権利条約に批准をしました。障害者権利条約では、障がい者と他の者との平等を基礎とすることで、障がいのない人以下の待遇を断固として明確に否定しています。障害者権利条約に批准をし、障がいをもつ人が障がいをもたない人と等しい待遇となる社会を目指すと宣言しておきながら、同じ国の司法機関が「損害の公平な分担」の名のもとに、障がい者であることのみを理由として、逸失利益を健常者よりも低い基準で算定するという矛盾が許されるのかという主張です。この主張については、障がい者の逸失利益の算定を専門的に研究している研究者に意見書を書いてもらい、証拠として提出しました。

2つ目の主張立証のポイントは、依頼者の「潜在的稼働能力」の主張立証です。

本件は、実際に就労する前に事故にあっているので、事故前の収入をもとに逸失利益を算定することができません。そのため、事故にあった時点での依頼者の能力や資質により、将来得られたであろう収入を立証する必要があります。そのため、幼少期から事故にあう中学生までの間に、依頼者と関りがあった方に数多くあい、陳述書を10通以上作成しました。通常の事案では、多くても2、3通程度の陳述書の提出という事案が多いので、かなり多くの関係者にご協力をいただき、厚い立証を行うことができました。

3つ目の主張立証のポイントは、「障がい者が能力を発揮できる社会環境があること」の主張立証です。
現在は、科学技術の進歩により、障がい者が健常者と同じように就労できる環境が日々整備されていっており、特に事務系の職種では、障がい者が健常者と同じ就労環境で就労することに、基本的には支障がない環境が整っています。この点を、障がい者の就労支援施設に意見書を作成してもらうなどして立証しました。

結果とやりがい

控訴審まで争いましたが、結果として、逸失利益については、健常者の80%相当額という認定でした。
健常者と同じ基礎収入は認められませんでしたが、同じく障がい者の基礎収入が争点となった公開されている裁判例と比べると過去最高額の基礎収入の認定でした。こちらの主張が100%認められたわけではありませんが、一定の理解を得られたという結果でした。

交通事故にあうと、重たい後遺障害が残り、その後の人生が一変することがあります。本件は、まさにそのような事案でした。代理人の弁護士は、依頼者本人とご家族の大きな思いを受け止め、それを背負って闘います。それは、容易なことではありませんが、とてもやりがいがあることです。最終的な結果(賠償額)も大事ですが、そこに至る過程はより重要です。
依頼者やご家族と思いを1つにして、ベストを尽くす。その大切さを感じた事案でした。

控訴審判決の日、本人やご家族が、「今日から、また新しい人生が始まります」と笑顔で仰ってくれた光景を忘れることはありません。

少年事件
PROJECT.2

少年事件

事件概要

少年数名がアミューズメント店から金品を強奪しようと店員を脅迫して金品を奪った少年事件です。
成人が事件を起こすと刑事裁判で審理されますが、20歳未満の未成年が起こした「少年事件」では、原則として家庭裁判所へ送致されて少年審判を受けます。その際、少年の人権を擁護し、更生に向けてサポートする役割を担う「付添人」という立場で本件に関わりました。

少年事件は、犯罪を犯した者を処罰することが目的ではなく、非行少年の更生を目的として行われます。付添人は、少年の更生のために、ご両親をはじめとした保護者、学校の先生、 医師や保護司等、少年の更生に協力いただける方と連携し、少年の育成環境を整え、少年自身が自らの意思で更生していく手伝いをします。要は、少年が社会に適合し非行を繰り返さないようにするようすることがゴールです。

解決方法

初めて少年と面談した時、本件に関わった他の少年たちは、自分の容疑を認めていましたが、私の担当する少年だけ容疑を認めずにいました。反省文を書かせても全く反省の色が見られません。なぜ容疑を認めないのか、少年の思いを探るために少年と心の距離を縮めるところから始めました。

はじめはなかなか心を開いてくれず、あまり口も開いてくれない状態でしたので、事件と関係なくいろいろな話をすることで、少年のパーソナリティや価値観を理解していきました。面会を重ね、少年も少しずつ口数が増えてきたタイミングで、話を深掘りしていくと、少年は強い仲間意識を持っていたことがわかりました。仲間のためにやったから悪いことをしたという認識がなかったようです。

自分の罪を認めさせないことに次のステップに進めないので、少年に反省文を書かせてはフィードバックをし、計4回反省文を書いてもらいました。フィードバックでは、当時の自分の気持ち、その時の被害者の気持ちを整理して考えさせ、自分の行動によって相手がどのような思いをしたのか理解してもらうことで、自分の犯した罪の重さを認識してもらいました。

少年の心を更正させるのと同時に、少年が元の生活に戻ってから非行を繰り返さないよう生活環境を整えるのも付添人の役割です。少年は当時母と二人暮らしでしたので、少年と面会する度に少年の様子を母親へ報告を行っておりました。

結果とやりがい

成人の刑事事件だと逮捕から裁判まで通常2~3ヶ月の期間があるのですが、少年事件は逮捕されてから約1ヶ月後には審判があるので、スケジュールがかなりタイトです。
その中で、少年と面会したり、生活環境を整えたりしなければならないので、弁護士側はかなりハードスケジュールです。

しかし、そんな忙しい中でも、面会は可能な限り毎日もしくは2日に1回は行くようにしていました。加えて、土日は取り調べがなく少年が寂しがるので、土日も必ず面会に行くようにしていたので、かなりハードでしたが、少年の将来に関わることですので、更正してもらえるように努力を惜しみませんでした。

結果として、少年は少年院に送られることになってしまいましたが、最初の反省文と4回目の反省文を比較しても、今後少年の更生に対する可能性は高いですし、目に見えて少年がいい方向に変わっていく、成長して大人になっていくのを短時間のうちに見ることができたので、とてもやりがいがありました。

少年事件は、更正が目的とされているため、処分の種類もたくさんあり(不開始、逆送、少年院送致、児童自立支援施設等の施設送致、保護観察、試験観察等々)、付添人が少年に寄り添って努力すれば、少年に適した処分を勝ち取ることもできます。少年が成長していく姿を見られることに加えて、頑張れば頑張った分成果が得られることが多いことも、少年事件のやりがいの一つだと思います。